議会発言 質疑の詳細

2012.11.5 平成24年第3回定例会 賛成討論

【賛成討論全文】

 ただいまより板橋区議会公明党を代表して、平成23年度東京都板橋区一般会計歳入歳出決算、並びに3特別会計決算の認定に賛成の立場から討論を行ないます。
 平成23年度のスタートは、新年度直前に発生した東日本大震災とそれに伴って起こった東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射線問題という、これまでに経験をしたことがない災害の対応から始まりました。そして夏場の計画停電への対応、放射線の測定や除染、被災者、被災地支援等、大船渡市への職員の長期派遣、板橋区地域防災計画の見直し等、防災対策と被災地への支援を行ないました。
 また、この大震災は回復の兆しをみせていたわが国の経済にも大きな打撃を与えることとなりました。政府はデフレ脱却、超円高への有効な経済対策を打つことが出来ずに、いたずらに景気の低迷を長引かせる結果となり、この経済情勢は板橋区財政にも大きく影を落としています。
 特別区民税は平成20年度をピークに毎年減少しており、平成23年度は前年度と比べて2億1300万円の減となりました。特別区交付金は固定資産税の増により前年度と比べて19億9000万円の増となりましたが、区市町村(くしちょうそん)民税(みんぜい)法人分(ほうじんぶん)の伸びが見られないことと、24年度には固定資産税の評価替えによる減少が予想される等、先行き不透明の中、なお予断を許さない状況にあります。このような財政状況にあって、板橋区は基金を活用することにより財源不足を補い運営してきましたが、実質収支比率は前年度に続き18億2200万円の赤字となりプライマリーバランスが崩れていることを表しています。
 財政指標では、人件費比率は19.0%で、前年度より0.9%改善し、公債費比率も5.2%と0.3%改善しました。しかし、経常収支比率は91.1%で、前年度を0.2%上昇し、更に財政の硬直化が進みました。
 このような状況を受け、「いたばしNo.1実現プラン2015」と「板橋区経営革新計画」のローリングに着手していますが、まだまだ不十分であり、構造的財政改革に取り組んでいるとはいえません。本年、596項目の使用料、手数料の改定を行いましたが、効果額は僅か約2500万円で、区民負担増は財政再建の柱とはなりません。 デフレ時における経済と財政の鉄則は「未来への投資」と「付加価値の創出」です。それを唯一可能にすることができるのは行政自身の大胆な構造改革を実行することです。保育園の官民格差の是正、窓口業務の民間委託など、行政の身を切る構造改革に挑戦していただきたい。「未来への投資」は教育・子育ての分野で、「付加価値の創出は」板橋区の持つハード、ソフトの財産の再生、再建に重点があることを申し上げます。特に保健所跡地、板橋駅の区有地については定期借地権を活用した、民間資金による効率的な活用を強く要望します。
 また今後人口減少を迎(むか)えるなかで、公共施設の整備計画の策定が急がれます。老朽化する公共施設を機能転換、統廃合、複合施設化、売却など財政に見合った具体的な計画にするため、学識経験者、専門家による「公共施設あり方検討会」を設置して対策を講じることを要望します。
 さらに、ICT化の促進とあわせて、人事のGNPニュースに示されている業務プロセスの好事例(こうじれい)を全面に出した業務革新(ぎょうむかくしん)改善運動への取り組みや、収入未済の徴収(ちょうしゅう)のアプローチについても職員提案の創意工夫がありますので、収入未済対策として早期徴収のための参考にして取り組んでください。

 それでは、平成23年度決算の主要事業について意見を申し上げます。

 まず、第1に子育て支援についてです。

 喫緊の課題である保育所の待機児対策として板橋保育ルーム、区立保育園の民営化、パートタイム勤務など保護者の多様な就労形態に応じた保育需要に対応するため2カ所の定期利用保育事業の開設等、定員を182名拡大されたことは評価します。しかしながら、4月1日付けの待機児童は342名と大変多い状況です。
また、働きたいが保育園に入れそうにないからと入園申請さえあきらめている潜在待機児童が全国レベルで約80万人以上いるといわれていますが、本区でも同じ状況であることは論を待ちません。そして保育の拡充は子育て支援にとどまらず、減少する労働人口にあって女性の就業率を上げて、ひいては経済の成長を支える施策としても期待されています。早急なる待機児童ゼロの実現を求めます。
 また、認証保育所を定数拡大策の一つと位置づけているのであれば、認可保育園との格差を埋めるために、保育料の補助金は最低2万円必要と考えます。

 第2に、教育・文化施策についてです。

 児童・生徒の「確かな学力」の定着を図るため、児童・生徒がつまずいている箇所に戻って学習することを狙ったフィードバック学習を小学6年生と中学1年生まで拡大されたこと、教育のICT化の一環として区内全小学校に電子黒板を配備されたこと、全小・中学校の図書館に司書を配置し、学校図書館の活性化を図ったこと、また「あいキッズ」を新たに5校で開始し、実施校を合計17校まで拡大したことを高く評価します。さらに「あいキッズ」事業の平成27年度までの完全実施を求めるとともに、フィードバック学習との連携により児童、生徒の学力向上を推進していただきたい。具体的には教員ボランティアの推進や学習指導講師の活用による全小中学校における無料塾の実施です。また、子どもの安全を守るため通学路は当然のこと、通学路周辺の安全確認の早期実施を求めます。
 社会問題化している学校でのいじめ問題については、早期発見と迅速、かつ的確な対応と、教職員、保護者を対象とした「いじめにどう対応するか」の体験交流の研修を開催するなど、防止対策の強化を求めます。
 学校の適正配置については、数年にわたり我が会派でも提案してきましたが、結局手順が示されず、一方通行の協議となってしまいました。早急に単学級になる可能性のある6校についても、児童数(じどうすう)回復の手立てを講じずる協議会の立ち上げと手順を示すことを強く要望いたします。また大山小学校の学校運営が充実するように教員の配置を手厚くするなど特段の配慮をお願いいたします。
 学校の危機管理として、脱法ハーブを吸引して門を乗り越えて不審者が侵入した事件を犯罪防止の教訓としてください。学校、幼稚園、保育園、児童館、学童の安全確保についてもリスクマネジメントを議論して、どんな危険と危機にも対応できるよう対策を講じてください。
 また学校のトイレ洋式化率30%未満の26校は、全校平均41.57%以上を目標に改善するよう求めます。

 第3に、区民の健康と女性施策についてです。

 高齢者の肺炎球菌 ワクチン接種の助成と妊婦健診においてHTLV-1(ワン)抗体検査を実施したことを評価します。
 現在、国の指針に基づき、40歳以上で偶数年齢ごとに実施されている乳がん検診は、30歳からの実施を求めます。
 また本年9月から不活化ポリオワクチン接種へ切り替えられたことは歓迎しますが、今後、将来ある子どもが安心して接種できる不活化ポリオワクチン接種を継続して実施するため、国の財政措置を要望すべきと考えます。

 第4に、高齢者・障がい者施策についてです。

 高齢化が急速に進む高島平団地の高齢者ニーズを把握し、おとしよりが安心して暮らせる環境づくりを推進するため「高島平団地高齢者地域包括ケアシステム」の施策ビジョンを策定されたことは評価します。さらに、区内70歳以上の高齢者実態調査と個別訪問事業を実施するなど、無縁社会への対応や孤独死防止のため、一人暮らし高齢者の支援を早急に確立することを求めます。これこそ、待ちの姿勢から一人ひとりの高齢者の実態を把握する攻めの福祉への転換です。
 重度知的障がい者などの活動の場である生活介護施設「三園福祉園」を開設したことは高く評価します。また、障がい者の働く場の確保という観点からも「スマイルマーケット」を本庁1階に設置することを求めます。

 第5に、区民サービス向上についてです。

 住民票、印鑑証明、戸籍謄本、課税証明書などのコンビニ交付が全国の自治体に広がっています。現在は「セブンイレブン」のみが対応していますが2013年には新たに2業者が参入する見通しです。区民サービスが一段と向上することになるコンビニ交付の実現を求めます。また、新しい南館ではATM付きのコンビニの設置を求めます。
 広報いたばしについては、配布先を希望する特養、老健、老人ホ-ム、公営住宅、けやき苑等に拡大するとともに、大きな文字に改善すること。紙面が足りない場合は、各種情報にまとめて別紙掲載することを求めます。

 第6に安心・安全の街づくりについてです。

 東京の防災上最大の弱点といわれる木造住宅密集(みっしゅう)地域対策として東京都の「木密(もくみつ)地域不燃化(ふねんか)10年プロジェクト」に大谷口地域が採用されたことは評価できますが、他の木造住宅密集地域対策を着実に推進し成果をあげていただくよう要望します。
 木造住宅・非木造住宅の耐震化助成の対象緩和と助成額の拡大、そして耐震工事の実績増は高く評価します。
また、防災のためのインフラとして重要となる橋梁(きょうりょう)長寿命(ちょうじゅみよう)化修繕工事の実施は先見性を含めて高く評価します。
 更には老朽家屋、空き地、ゴミ屋敷対策についても積極的な取り組みを強く求めます。
 コミュニティバス「りんりんGO」の新高島平駅への延伸運行の実施を評価します。
しかし、運行経費が国際興業バスとの契約で割高となっており、4年間の実験運行の終了に伴い、契約相手の見直しとともに契約内容を大きく見直すこと。
また、コミュニティバス運行の評価にあたっては地域住民と共に行うことを要望します。
また、公共施設への日光産木材の積極的利用を推進するため、日光市と協定を結ばれたことを評価します。

次に、3特別会計決算について申し上げます。

 国民健康保険事業特別会計は、一般会計からの繰入金が82億7769万円、そのうち財源不足を補う繰入金が前年度対比1億7531万円の減となり改善がみられます。また、保険料(ほけんりょう)の収入未済も前年度対比で5901万円とわずかではありますが改善していることは評価いたします。しかし、制度上の問題とはいえ一般会計からの繰入金は区財政の圧迫となっている状況は変わりがありません。今後とも財政運営の改善に向けて努力をお願いいたします。
 介護保険事業特別会計につきましては、第5期介護保険事業計画に伴って保険料が見直され、標準世帯といわれる第4段階の方(かた)で、月額4,450円、前期対比331円の値上げとなりました。しかし、基金の活用により大幅に保険料負担を抑えることができ、23区では最も低い保険料となったことは高く評価するものです。今後とも適正な介護保険事業と会計の運営に努力されることを要望いたします。
後期高齢者医療事業特別会計については、区長報告を了承します。

 以上、意見を述べてまいりましたが、冒頭申し上げました通り、区財政を取り巻く環境は厳しさを増してきております。平成25年度予算編成に向けて、本格的行財政(ぎょうざいせい)改革の推進による、区政の持続的な発展を可能とする健全な財政構造を確立されることを期待するとともに、区長には、政治家として区民が希望を感じるような区政運営を心がけていただくよう要望し、平成23年度の一般会計並びに各特別会計決算につきまして、認定することに賛意を表し、公明党の賛成討論を終了いたします。